スケジュールが立て込み、すっかり更新が遅れてしまいました。
今年中に今年の内容は更新しますので、読んでいただけると嬉しいです
■カストリ書房とは
■吉原遊郭をめぐるガイドツアー
いつものSEEXの前に、カストリ書房さんが実施されている吉原遊廓をめぐるガイドツアーに参加しました。一見普通の風俗街に見える吉原を、カストリ書房の店主である渡辺豪さんが吉原遊廓の痕跡を紹介するツアーです。
【吉原遊廓】日本唯一の遊廓専門書店長と歩くディープ街歩き 割引券付!
何も考えなければ素通りしてしまう、小さな痕跡を丁寧に読み解いていく渡辺さんの言葉に、見えている世界が変わっていきました。不自然な段差や、何気なくある交番に理由があるなんて。吉原の地域そのものが、渡辺さんの言葉によって展示物に変わっていくのを感じて、内心はしゃぎっぱなしでした。
気になったことを質問すると渡辺さんからより多くの情報を聞き出すことができ、何でもかんでも聞きたくなってしまいました。どこまでこの方は探求されているのだろう…
ツアーの後、カストリ書房内を見学させていただきつつ、店主の渡辺豪さんにお話を伺いました。
■カストリ書房の本の収集方法と本屋である理由
■貧弱になりつつある遊廓のイメージ
ある物事の時間が経つほど、引き出せるイメージが固定されていくのは仕方がないことですが、遊廓も同じような傾向があって、「遊廓」と聞くと多くの人は、江戸時代をイメージする。言い換えると、江戸時代しかイメージできない。
遊廓というのは、全国規模で見ると明治の終わりから大正の初めくらいが産業としては最盛期だったのです。30年ほど前の世代にとって、その事は当り前に分かっていて、明治を時代背景とした創作も多かった。例えば、五社英雄の『吉原炎上』(1987)です。あれを江戸自体の話として勘違いしている人も多いですが。
わずか四半世紀程度で、物事のイメージが狭まって、固定化されてしまうことも珍しくない。それは誰のせいでも無いのですが、一つ言えるのは、関連する情報をしっかり残してこなかった、残していてもアクセスできえるように整えておかなかったのが原因である、とは言えると思います。引いては、性に関する情報も同じことが言えると思います。
いま誰もが体感的に理解できていても、わずかな時間で誰もが分からなくなってしまうことがおき得る。誰もが分かっているからこそ、「残そう」という意志も生まれない。
■カストリ書房の目指す方向性
先程のお話とかぶるのですが、情報の大切な部分、コアな部分を突きつめつつ、情報を伝達するために新しく興味を持つ人をどう増やすか、興味持ち始めたビギナーさんに興味を深めるために、どう見せていくか。情報の収斂化とカジュアル化という相反するものを、どう舵切りしていくかが一番難しいです。突きつめていく作業は実はそれほど難しくないんです。一直線の作業だし、自分が楽しいですからね。
理想は、「遊廓の日常化」です。知ろうと思ったときに、すぐ知ることができる、これを実現したい。遊廓の歴史は民衆史、郷土史の一部でもあると思うからです。
遊廓の情報を伝えるための実践的な場として本屋を選択した渡辺さんの長期的な視野に、遊郭への深い愛を感じました。言葉が浅くなってしまうのですが、自分が理想とする「遊廓」ではなく、土地や人に根差した生の遊廓をしかと継承していきたいというその事実への誠実さに崇高なものを感じます。
これが作りこまれたおっさんの冗談を連発する、Twitterにいる渡辺さんと同一人物だなんて(笑) 熱い思いとお茶目さが同居するめちゃくちゃカッコいい大人だなと思いました。絶対モテるな…(イロタカ個人の見解です)
今回のSEEX参加者は興味関心の異なる人々が集まっていたのですが、知的好奇心が旺盛な方ばかりで、その後の自由時間は本を片手に思い思いの話を繰り広げていてそれぞれ新しい気付きを得られたようでした。ハイレベルな知の交流でした、尊い…最高…渡辺さん本当にありがとうございました。
カストリ書房
営業時間:11〜18時 定休日:月(祝日は営業、臨時休業あり) 〒111-0031 東京都台東区千束4-39-3 ※駐車場なし(近在にコインP有)
http://kastoribookstore.blogspot.com/